私が今、勤務している急性期病棟はとても忙しい職場です。比較的小規模な病院のため、シフトで一緒になる人はいつも同じ顔ぶれなんです。
病院って独特な職場で、同僚といっても職種によってすごい壁があります。
例えば医者は同僚でありながら後輩であっても上の存在。指示を出してもらって動くので当たり前なんですけど、先生の中には看護師を人として扱っていないような人もいるんです。
そういう意味では患者さんも「お世話になってる」と思ってくれる人もいれば、「世話して当たり前だろ」って感じの方もいます。
でも一番のストレスは看護師同士の人間関係です。先輩の中には「お気入りの後輩」と「気に食わない後輩」のレッテルを貼って態度が違う人がいます。
どんなに頑張ってもそのレッテルは変わらないんです。
私はある先輩から「気に食わない後輩」のレッテルを貼られていて、質問しても無視されるし、一番ひどかったのは私のナースシューズが捨てられていたことです。
先輩に嫌われた理由は、新人の頃、ミスをしてしまい、そのことでその先輩が先生から叱られたからです。
「あなたのせいで私がダメだと思われたじゃない」と言われて、それ以来、ずっとそんな感じです。
新人の頃のミス。今更取り返せません。狭い職場なので何か私が言ったら、すぐに広まるので同僚には相談できません。先生たちは見てみないふりだし、用務員のおじさんは優しくしてくれますが、先輩に何か言えるような人ではありません。体力的にキツイのは我慢もできますが、こんな人間関係、もう限界です。
閉鎖的な環境の中で貼られてしまったレッテル、とても厳しいですね。
人間関係というのは一度、形が決まってしまうと、余程のことがないと大きく変化させるのは難しいですよね。
Aさんはとても勇気のある方です。Aさんは次の3つの方法で、この悩みに取り組みました。
1・現状の中で人間関係を変える。
Aさんは簡単に職場を変えられないと思いました。かと言って、このままではずっと人間関係は変わることはないでしょう。
では、先輩の心を動かすしかありません。表面的な言葉では人の心は動かせません。
しかし、大人になると本心をぶつけてくる相手は少なくなるので、意外と相手も動揺するものです。
動揺は変化を産みます。かなり勇気がいる方法ですが大きな変化を起こす最短の方法です。
しかし、Aさんはここでミスをしました。先輩に本心でぶつかったのはよいのですが、先輩を攻めてしまいました。
人は責められると壁を作り、自己防衛のため、自分を正当化するものです。
これでは先輩が「自分が悪かった」と思うことはなく、Aさんはより責められる対象になってしまうのです。
本心をぶつけるときは、“絶対に相手を責めないこと”が必要です。
「あなたに認めてもらえないことはとても悲しい」というニュアンスで相手に訴えるのがよいでしょう。
2・狭い職場だけではなく、もう一つ外側に助けを求める。
勇気を出したAさんでしたが先輩との溝は深まってしまいました。
そこでAさんは、「先輩より強い存在」に訴えることにしました。
これには危険性もあり、継続的に外側の力が見守ってくれる確証が必要です。
一時的なものだと「上司にちくった」という先輩のいかりを買ってしまうだけなのです。
できるだけ先輩が態度を改めざろう得ないような外側にいる強い相手を利用することです。
Aさんの場合は、病院のメンタルヘルス相談窓口と看護部長に相談することにしました。
この時の注意点は「先輩が怒っても毅然とした態度で自分の正当性を貫く」ことです。ここでAさんが謝っては今までと同じ状況になってしまうのです。
また「仕事に関して先輩に文句を言われない」というのも必要でした。
それから上の人から注意してもらう際は、その先輩一人の時にしてもらい、「周囲の人には気づかせない」というのも大事なポイントになります。
先輩の居心地を悪くすることは、Aさんにとってもよいことではないのです。
しかし、またしてもAさんは失敗してしまいました。実は、看護部長や相談窓口に言う前に、同僚の看護師に先輩のことを話していたのです。
話はAさんが上に言うよりも前に「うわさ」という形で広まってしまいました。
このため、部署内でAさんの存在をよく思わない人が増えてしまったのです。「うわさ」は人間関係を最も悪くする要因です。
3・凝り固まった人間関係から離れて、まったく関係のない新しい場所に異動する。
仕事は人生の一部です。そう一部。決して全てではないのです。そして、大事なのは”あなた自身が自分らしくいられる”ことです。
どうしても人には相性というものもありますから、どうしようもない時は「先輩がいる職場から離れる」という選択肢も考えてみてください。
ひとつは部署異動です。上司に相談して病棟を替えてもらうことも一つの方法。また、転職という選択肢もあります。病院は他にもたくさんあります。
あなたに合う職場を探し、転職することで「今までの苦しみはなんだんだんろう」と思えるほど、楽しい職場で働けるかもしれませんよ。
Aさんは、最終的に転職を選びました。
転職後のAさんの声
「なんでもっと早く転職しなかったのかなってくらい、今はすごい仕事に行くのが楽しいです。
でも、あの時、先輩に言いたいことを入ったし、看護部長にも話をしたので後悔はありません。
今の病院は職員数がおおいので合わない人もいますが、合う人もいるし、一緒にいたくなければ離れていることもできます。
仕事上では合わない人とも普通にやっています。
悩んでいた頃は、辛い環境から逃げ出すことなんて大変だし、無理だと決めつけていたように思います。
でも、一歩踏み出したことで本当に毎日が変わりました。
もし、今、職場の人間関係で苦しんでいる人がいるなら、『そこに縛り付けられないで』と言ってあげたいです。
仕事のせいで人生を全部暗いものにする必要はないと思います。
転職はかなり不安でしたけど、あのままあの環境にいたより、絶対によかったって思っています。
あと辛いことを乗り越えたことでちょっと強くなれた気もします」